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インタビュー:根路銘まりさん

沖縄県立芸術大学にて、伝統工芸である紅型をはじめ 様々な染め方を学び、

中でも着物染色の奥深さに魅了される。制作では、主に神話や神々を題材に

着るためのみならず、絵として鑑賞できる着物(飾り衣装)を手掛ける。

現在は大学院に通いながら、日本・ロシアを中心に国内外で積極的に活動の幅を広げている。


自分について①


私は、沖縄の伝統工芸「紅型」に用いられる型染・糊防染という技法を用いて制作しており、伝統技法の洗練された美しさを残しながら、それを独自の感覚と融合させ、現代的な新しい伝統の形を創造しています。日本の神話、伝説、祭祀からインスピレーションを得て、それらに自身の解釈を織り交ぜて創作活動をしています。作品の中には、私が日々を生きる中で感じる、人の力でコントロールすることのできない自然への崇拝と畏れ、人の心の奥底に秘めた感情、生命の根源と死の神秘を神話と結びつけて表現しています。さらに、全ての物事に良い面と悪い面があるように、神の霊魂にも優しく温厚な和御魂(にぎみたま)、荒ぶる猛々しい荒御魂(あらみたま)の二つの面があり、私の作品にも必ずこの相反する二つの面が描かれています。


「紅型」とは沖縄を代表する伝統工芸であり、琉球王朝時代に確立しました。多彩な顔料を用いた色鮮やかな色彩が特徴です。私はそれを墨という色材と組み合わせて染色作業を行います。墨の深みのある漆黒と顔料の鮮やかな色彩、そして染料の透明感が私の作品に独自の世界を創り出しています。


日本の工芸美術には陶器の飾り壺や漆の飾り盆の様に、最高級の物は実生活で使うのではなく、特別な場所に飾って鑑賞するという文化があります。私も「飾衣裳」という概念をもとに着ることを前提としない絵画としての着物を制作しております。


私の作品は全て神話や伝説、空想や夢など異空間への入り口として制作しています。私の作品の前に立った時、そこからどの様な世界に飛んでいくのか、それは作品を見る人の自由な想像に委ねられます。




主な経歴


2016年4月〜2019年3月 ロシア留学

2017年4月 ロシア日本文化フェスティバル "日の出" 出店

2017年8月 ロシア日本文化フェスティバル J-fest  出店

2018年4月 ロシア日本文化フェスティバル "日の出" 出店

2018年8月 ロシア日本文化フェスティバル J-fest  出店

2019年3月 沖縄県立芸術大学 美術工芸学部 デザイン工芸学科 工芸専攻 染め分野 卒業

2019年5月 作品《天照大御神》第41回 日本新工芸展 上野の森武術感奨励賞 受賞

2019年5月 作品《天照大御神》第41回 日本新工芸展 全国巡回展に選出

2019年5月 第一回 日本文化フェスティバル KOMOREBI 出店、ゲスト出演

2019年6月 サンクトペテルブルク エラーギン国立公園博物館 作品展示

2019年6月 サンクトペテルブルク マリーノ邸宅 作品展示

2019年6月 サンクトペテルブルク フラワーパレード 出演

2019年7月 ロシア日本文化フェスティバルJ-fest 出店

2020年2月 スイス日本文化フェステバル Japan Impact 招待 作品展示・和文化体験 講師

2020年4月 沖縄県立芸術大学院 造形芸術研究科 生活造形専攻 工芸専修 入学

2020年7月 三菱商事アート・ゲートプログラム奨学生 入選

2021年5月 作品《月讀命》第43回 日本新工芸展 入選

2021年5月 作品《神生み》第1回 日本和文化グランプリ 一般の部 最終選考ノミネート









◆紅型制作の時、大事にしているこや想い。


 私の作品を「紅型」と言ってしまうと、いささか烏滸がましいような気もします。厳密に言えば、紅型とは呼べないかもしれませんが、沖縄県立芸術大学にて基本的な紅型の色彩や技法を学び、それを基に独自の感覚と融合して作品を制作しているため、大本の技法は紅型です。制作時に大切にしていることは、型染の特徴と言えるシャープで線を綺麗に出すことです。また、型染の良さを欠かず、しかし型紙に囚われないように気をつけております。主にガジュマルをモチーフに作品を制作しているため、ガジュマルの大きさ、幹の太さ、力強さが損なわれないよう、一枚の大きな図案を何枚もの型紙に分割して絵柄を彫っています。そのため、一旦の着物を染めるために、55×91cmの型紙を18-24枚使用しています。枚数が多いため、型彫りには特に時間がかかります。指も痛くなり、方もこり、ずっと座った体制なのでお尻も痛くなってきますが、作品の完成図を思い浮かべ、それに向かってひたすら型を彫り続けるのです。着物を染めるには、雛形のデザインから水元まで、たくさんの工程を踏みますが、どの工程も気が抜けません。時折逃げ出したくなりますが、辞めたいと思ったことは一度もなく、私はやはり創作活動が好きなのだと思います。これしかないとも思っております。第二次世界大戦後、紅型を含む沖縄の文化や工芸技術は一度途絶えそうになりました。お金もなく、食べ物もなく、その日を生き抜くのがやっとという過酷な時代に、血の滲むような努力で技術を繋いできてくれた先人の方々には本当に頭が上がりません。私が生まれるずっと前に行きた人々が命懸けで守り抜き、伝承して下さった技術のおかげで私の創作活動は成り立っているのだということを、ひしひしと感じながら制作しております。今後も「紅型」や「型染」の技法を絶やさないために、制作者としてできることは大きく分けて2つあると私は考えております。一つは、古くから伝わる技を変えずに、文化財、伝統技術として守っていくこと。そしてもう一つは伝統技法を基に独自の感性や現代的な美的観念を加え新しい伝統の形を作ることです。私は後者の方が自分に合っていると思い、紅型の技法、沖縄のモチーフを選びながら私自身の解釈も交えて表現しています。沖縄の伝統文化をより多くの人に知ってもらうきっかけにでもなれればという思いで日々創作活動に勤しんでおります。



◆紅型制作の時、大事にしているこや想い。


 私の作品を「紅型」と言ってしまうと、いささか烏滸がましいような気もします。厳密に言えば、紅型とは呼べないかもしれませんが、沖縄県立芸術大学にて基本的な紅型の色彩や技法を学び、それを基に独自の感覚と融合して作品を制作しているため、大本の技法は紅型です。制作時に大切にしていることは、型染の特徴と言えるシャープで線を綺麗に出すことです。また、型染の良さを欠かず、しかし型紙に囚われないように気をつけております。主にガジュマルをモチーフに作品を制作しているため、ガジュマルの大きさ、幹の太さ、力強さが損なわれないよう、一枚の大きな図案を何枚もの型紙に分割して絵柄を彫っています。そのため、一旦の着物を染めるために、55×91cmの型紙を18-24枚使用しています。枚数が多いため、型彫りには特に時間がかかります。指も痛くなり、方もこり、ずっと座った体制なのでお尻も痛くなってきますが、作品の完成図を思い浮かべ、それに向かってひたすら型を彫り続けるのです。着物を染めるには、雛形のデザインから水元まで、たくさんの工程を踏みますが、どの工程も気が抜けません。時折逃げ出したくなりますが、辞めたいと思ったことは一度もなく、私はやはり創作活動が好きなのだと思います。これしかないとも思っております。第二次世界大戦後、紅型を含む沖縄の文化や工芸技術は一度途絶えそうになりました。お金もなく、食べ物もなく、その日を生き抜くのがやっとという過酷な時代に、血の滲むような努力で技術を繋いできてくれた先人の方々には本当に頭が上がりません。私が生まれるずっと前に行きた人々が命懸けで守り抜き、伝承して下さった技術のおかげで私の創作活動は成り立っているのだということを、ひしひしと感じながら制作しております。今後も「紅型」や「型染」の技法を絶やさないために、制作者としてできることは大きく分けて2つあると私は考えております。一つは、古くから伝わる技を変えずに、文化財、伝統技術として守っていくこと。そしてもう一つは伝統技法を基に独自の感性や現代的な美的観念を加え新しい伝統の形を作ることです。私は後者の方が自分に合っていると思い、紅型の技法、沖縄のモチーフを選びながら私自身の解釈も交えて表現しています。沖縄の伝統文化をより多くの人に知ってもらうきっかけにでもなれればという思いで日々創作活動に勤しんでおります。



◆紅型の作業工程で好きな作業は?


染色工程が終わった後、糊を洗いおとすための水元という作業です。糊が落ち、糊があったところに白い線ができ、柄がはっきりと見えるようになるので、今までやってきた作業の成果を初めて目の当たりにすることができます。また、水の中で染めた反物がゆらゆらと揺れ、自然光に照らされてキラキラと光るのを見ていると、とても心地よい気分になります。寒い日、雨の日などは少し大変ですが、それでも一番楽しく、好きな工程です。

他にも、やはり色を挿していく工程は好きです。顔料をといた豆汁の匂い、刷毛が生地に擦れる音が心地よく、最初の配色は淡く、二度刷りで濃く染まっていく生地を見ていると段々と完成図に近づいてきてワクワクします。




◆紅型を通して得た喜びやエピソード。


 私は2年ほどロシアに住んでいたことがあります。ロシアは独自の素晴らしい芸術文化を持っており、芸術分野に携わっていない人でも文化を愛し、休日は様々な美術館へ出かけます。そのような中、私が芸大生で、着物の染めを専門とするアーティストだと知れると、沖縄の文化について、染物について、着物について、紅型についてなど様々な質問を投げかけられ、それに答えていくうちに自然と仲良くなり、体験教室なども通して交流を深めることができました。また、南国独自の植物ガジュマルをモチーフにした作品は現地の人々にもとても評判で、小規模ですが展示会などもすることができました。体験教室は型染でなく、簡単なタイダイ染やステンシル、またはつまみ細工かんざし作りなどでしたが、必ず沖縄や日本の文化、染色文化、紅型の工程などのプレゼンテーションも体験教室の前後にやりました。また、こうした活動を通して仲良くなった友人の計らいで、モスクワ東洋美術館、ロシア国立装飾美術館にて特別な展示を見せてもらうこともでき、ロシアの衣裳やテキスタイルについても学ぶことができました。それ以外にも多くの美術館・博物館に足を運び、ロシアの芸術について勉強しましたので、今後の創作活動に生かしたいと考えています。このようなロシアでの作品を通した交流のなかで、染色という伝統工芸を学んでいてよかったと思うのと同時に、もっともっと技術を学びたいと思うきっかけとなりました。




◆紅型の面白さや難しさは?


 古典的な美しい紅型の技法を基に、様々に形を変えて現代的なデザインにしたり、そこに自分の感性をのせたりできるところにあると思います。驚くべきことに、鎌倉芳太郎先生の集めた資料を熟覧した際、そこに現代アートのようなモダンなデザインの型紙もあったのです。その型紙を拝見した時「紅型」の底知れぬデザイン性を感じました。私もどちらかというと現代的な絵柄の作品を制作しています。今もこの「モチーフで作品を作りたい」などアイディアはたくさんあるのですが、ひとつひとつ形にするにはやはりそれなりの時間がかかりますので、頭の中に絶え間なく浮かんでくる作品案に私の仕事量が追いつかないという状態です。

 難しさについて、漠然といつも難しいなと感じていますが、具体的に書き出すとなんでしょうね。ひとつひとつの工程をしっかりこなしていく事が、とても大切で、やはり難しいです。私たちは人間ですから、感情の起伏や体調の変化がありますが、手元は常に落ち着いて、一定の調子で動かさなくてはいけません。修正できない失敗をしてしまうと、これまで積み重ねてきた作業が水の泡になってしまいすから。長く同じ工程をやっていると「早く次の工程に行きたい」と焦る気持ちも出てきます。そのような時にも集中を切らす事なく丁寧に作業ができるよう日々心がけています。



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